給湯器交換を失敗しないための資格・リスク・業者選びを徹底解説

2024年7月1日 |  コラム

給湯器には水道管、ガス管、電源線が接続されており、「水」、「ガス」、「電気」の3つの要素それぞれに役割があります。

「水」はお湯の原料で、熱伝導性に優れているため効率的に温めることができます。「ガス」は燃焼によって熱を発生させ、お湯を沸かすエネルギー源になります。「電気」は各部品を制御したり、ガスバーナーを点火します。「水」、「ガス」、「電気」が、それぞれ役割を果たすことで、安全かつ効率的にお湯を供給することができるのです。

給湯器の交換では、この「水道」、「電気」、「ガス」の3つの要素について専門知識と技術が必要になります。業者に交換を依頼するときには、資格の有無を確認することが大切です。しかし、資格には国家資格と民間資格があったり、都市ガスとプロパンガスで異なったり、色々な資格があるため、本記事では給湯器交換に関連する資格を整理しました。

給湯器交換に必要な資格

液化石油ガス設備士

経済産業省所管の「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」に定められている国家資格です。

液化石油ガス(LPガス)の供給設備や消費設備の設置、変更、修理を行うために必要な資格です。上記法律では、「液化石油ガス設備工事の欠陥等による災害発生の防止のため、ガス栓と硬質管を接続する作業など特別な技能を必要とし、かつ、災害の発生防止に特に重要と認められる作業については、液化石油ガス設備士が従事しなくてはならない」と規定されている重要な資格です。

免状の交付を受けた日の属する年度の翌年度の開始の日から3年以内に、また、再講習を受けた日の属する年度の翌年度の開始の日から5年以内に、設備士再講習を受講しないと免状が失効します。

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ガス消費機器設置工事監督者

経済産業省所管の「特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律」に定められている国家資格です。

特定ガス消費機器の設置や変更工事の監督を行うために必要な資格です。

特定ガス消費機器とは、「ガス事業法」で定められた機器と「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」で定められた設備で、屋内に設置する風呂釜やガス瞬間湯沸かし器などに代表される、ガスによる災害の発生リスクが高い機器になります。

ガスによる災害は、火災や一酸化炭素中毒といった重大な事故につながるおそれがありますが、その中でも特定ガス消費機器は災害の発生リスクが高いものになるため、必要な知識とスキルをもった有資格者が工事、監督することになっています。

なお、「液化石油ガス設備士」の有資格者は監督者とみなされるため、ガス消費機器設置工事監督者の資格がなくても工事をすることができます(ガス消費機器設置工事監督者の資格取得は不要)。

資格の有効期間は3年間で、更新するには3年ごとに更新講習を受講する必要があります。

ガス消費機器設置工事監督者の詳細はこちら

ガス可とう管接続工事監督者

一般財団法人日本ガス機器検査協会(JIA)の民間資格です。

ガス可とう管(強化ガスホースや金属可とう管など)を使用して、ガス機器とガス栓の接続工事を行うために必要な資格です。

ガス可とう管という言葉は聞いたことがないと思いますが、従来の硬い金属製の配管と異なり柔軟性がある配管で、設置場所の制約が少ないのが特徴です。反面、その柔軟性により接続不良やガス漏れのトラブルが発生する可能性があります。そのため、知識とスキルがある有資格者が工事、監督することになっています。

資格の有効期間はありません。

ガス可とう管接続工事監督者の詳細はこちら

簡易内管施工士

一般財団法人日本ガス機器検査協会(JIA)の民間資格です。

都市ガスを使用している地域で、ガス機器の移設・設置工事に伴う、ガス栓の増設や位置替えを行うために必要な資格です。

簡易と付いているとおり、簡易な都市ガス配管工事の設計、施工に必要な知識とスキルがあることを証明する資格になります。上記2つの監督者資格と異なり、資格をもっている本人が直接工事を行わなければなりません。

なお、工事実施にあたっては、東京ガスや大阪ガスなどの都市ガス供給業者との間で簡易内管施工登録店契約が必要になります。有資格者がいても、登録店契約をしていないと工事ができません。

資格の有効期間は3年間で、有効期間内に更新講習を受講すると、受講年度の翌年度の4月1日から3年間に更新されます。

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給水装置工事主任技術者

国土交通省所管の「水道法」に定められている国家資格です。

給水装置の設置や撤去、変更を行うために必要な資格です。給湯器の水道管の接続や修理をおこなう場合は必要になります。

給水装置工事主任技術者の監督があれば、資格を有していない人でも給湯器交換に伴う給水装置の工事を行うことができます。なお、水道工事事業者が市町村の水道事業者(水道局をイメージしてください)から指定給水装置工事事業者の指定を受けるための要件の一つが、給水装置工事主任技術者が在籍することになっています。

資格としての有効期間はありませんが、主任技術者証(希望者のみに発行)の有効期限は5年間です。主任技術者証を更新するには、研修を受講する必要があります。ただし、有効期限を過ぎても資格を喪失することはありません。

給水装置工事主任技術者の詳細はこちら

第二種電気工事士

経済産業省所管の「電気工事士法」に定められている国家資格です。

住宅や店舗などで600V以下で受電する設備の配線やコンセントの工事を行うために必要な資格です。

給湯器の設置工事でコンセントの増設や電源接続工事を伴う場合は、第二種電気工事士の資格が必要になります。すでにコンセントが設置されている場合は不要で、実際、給湯器の交換だけであればコンセントが設置されていることがほとんどです。

資格の有効期間はありません。

第二種電気工事士の詳細はこちら

ガス機器設置スペシャリスト

一般財団法人日本ガス機器検査協会(JIA)の民間資格です。

ガス機器の設置に係る業界団体が創設した「ガス機器設置技能資格制度」に基づき、ガス機器の設置工事に必要な高度な知識・技能を有していることを示す資格です。なお、給湯器交換に必須の資格ではありません。

資格の有効期間は3年間です。有効期間内に更新講習を受けることで更新されます。

ガス機器設置スペシャリストの詳細はこちら

※各資格の内容は、2024年6月現在のものとなっています。

業者選びのときに確認すべき資格

ガス給湯器の交換に必要な資格を紹介しましたが、給湯器が故障して交換が必要な場合でも、工事内容によって必要な資格は異なります。資格の説明の中でも触れていますが、シンプルに整理すると次のとおりです。

プロパンガス給湯器の場合

液化石油ガス設備士が必須になります。液化石油ガス設備士は、他の給湯器関連の資格と比べると合格率が低く、試験実施回数が少ないため、取得の難易度が高く、取得していない業者も一定数いますので、しっかり確認しましょう。

都市ガス給湯器の場合

ガス消費機器設置工事監督者および簡易内管施工士は必須になります。工事内容によっては、ガス可とう管接続工事監督者も必要です。

コンセントや電源接続工事を伴う場合

第二種電気工事士が必須になります。

水道管の接続や修理を伴う場合

給水装置工事主任技術者が必須になります。

その他

ガス機器スペシャリストは業界の自主的な資格制度ですので、何かの工事をするのに必須になることはありません。あくまでスペシャリストであることを証明する一つの要素です。

電気工事や水道管の工事まで必要かは個人では分からないと思いますので、プロパンガスと都市ガスの給湯器交換で必須の資格だけ確認できれば十分です。

業者の資格確認のポイント

各資格の説明の中で、資格や免状、資格者証の有効期間に触れました。中には、一度取得してしまえば有効期間なしにずっと有効な資格もあります。

更新制度の有無に関わらず、業者としては安心・安全な工事をすることが一番大切です。そのためには、資格取得で必要になる知識や技術を活かして日々工事をしたり、最新の情報を仕入れたり、ブラッシュアップし続ける必要があります。

そういう意味では、ただ単に給湯器交換に必要な資格を保有しているか確認するだけでなく、新しい事例が紹介されているか、資格の更新講習など講習受講が報告されているか、事例の中で専門家としての工事への心構えが伝わってくるかなど、業者のホームページで生きた情報をあわせて確認することをおススメします。

無資格の業者に依頼するリスク

本来、無資格で給湯器交換を行っている業者がいてはダメなのですが、残念ながら無資格の悪徳業者も存在します。万が一、無資格であることに気付かずに依頼した場合、次のようなリスクが発生する可能性があります。

ガス漏れ・水漏れ・破損リスク

ガス漏れや水漏れ、破損などのリスクがあります。

特にガス漏れは危険です。ガス漏れすると、最悪、ガス漏れが原因で爆発して火災が起きたり、一酸化炭素中毒になる可能性があります。火災になると自分だけでなく、近隣にも多大な迷惑をかけてしまうことになります。

水漏れは、長期間放置されると床や壁、天井などの建材が腐食したり、カビが発生したり、建物の損壊につながる可能性があります。2階の場合は、階下の住居に被害が出る可能性があります。

また、知識や技術なしに施工をすると、給湯器や外壁などを破損する可能性もあります。

メーカー・業者の保証が受けられないリスク

メーカー保証は、正規の業者によって取り付けられた給湯器に対して適用されます。違法に取り付けられた給湯器は、メーカーの定める品質基準を満たしていない可能性があり、故障やトラブルが起きても、メーカーは責任を負いません。保証がないと、給湯器が故障したときに修理費が高額になる可能性があります。

また、正規の業者に依頼した場合は保証が付いていることが多いですが、違法な業者は交換工事に保証が付いていないため、工事でトラブルがあっても保証を受けられません。

さいごに

給湯器の交換に限らず、近年はネットで格安の業者を見つけて依頼して、見積りもなく高額な工事費が請求されるトラブルが多発しています。給湯器に関しては、有資格者のプロが行くと言いながら無資格者に工事をさせる悪徳業者がいるようです。

リスクのところに書きましたが、ガス給湯器はガス機器ですので、爆発による火災や一酸化炭素中毒といった重大事故だけは絶対に避けなければなりません。安全に工事を完了できることが重要で、そのためのそれぞれの資格になります。

給湯器交換が必要になったときに、この記事が、安全安心な工事ができる業者選びの参考になれば嬉しいです。

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