2024年4月22日 | コラム
正直、バランス釜ってなに?という方が多いのではないでしょうか。
私は小学生の頃と会社の社宅に住んでいた20代前半から半ばまでは、バランス釜が設置されたお風呂を使っていましたが、バランス釜という名前は知りませんでした。
多くの人は、お風呂の修理や交換が必要になって業者を呼んだときに、初めて「あ、うちのお風呂ってバランス釜って言うんだ」と知る感じではないでしょうか?
バランス釜とはどういうものか?バランス釜が設置されている賃貸物件に入居する場合のメリットとデメリットはなにか?使用するときの注意点は?交換する場合の目安の時期はどのくらいか?をまとめました。
バランス釜は、「バランス型風呂釜」の通称で、給湯器の一種です。主に、1980年代から1990年代に建築された物件で浴槽と並べて設置されています。もしかしたら、浴槽をイメージした方もいるかもしれませんが、浴槽ではなく給湯器のことです。といってもイメージがわかないかもしれないので下の画像を見てください。
画像の赤で囲った部分、これがバランス釜になります。
給湯器の一種ということ、それに見た目も分かった。でも、バランス釜って言うくらいだから何かと何かがバランスしているってことでしょ?なにとなにがバランスしているの?と次なる疑問が湧いてきましたよね?
めちゃくちゃ簡単に言うと、「吸気」と「排気」のバランスを指しています。
簡単に仕組みを説明すると、お風呂の水を温めるためには、バランス釜でガスを燃焼させる必要があります。浴室内の空気ではなく、屋外から新鮮な空気を取り込んで燃焼させ、そこで発生した排気ガスを屋外に排出するのですが、この空気量と排気量のバランスが常に取れていることを意味しています。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、バランス釜の奥(壁側)に吸排気管があり、画像の部分を通じて屋内と屋外で吸排気するものが多いです。他に、バランス釜のすぐ奥ではなく煙突を設置して、浴室内の天井近くの位置で吸排気することもあります。これは物件によります。
分かるような、分からないような・・・という感じかもしれませんが、お風呂の専門家になるのでなければ、詳しく理解する必要はありませんので、「ふ~ん、そういうもんなんだ」くらいで大丈夫です。
バランス釜による直接のメリットではなく間接のメリットになりますが、バランス釜が設置されている物件は築年数が古い賃貸マンション・アパートが多いため、給湯器タイプやユニットバスが設置されている物件と比べると、家賃が安い場合が多いです。
バランス釜は電気を使わずにガスを燃焼させてお湯をわかす仕組みです。また、ガスを燃焼させるための点火装置はアルカリ乾電池を使用しています。そのため、お湯を沸かすのに電気を使わないので停電時でもお風呂に入れます。
他に、「追い炊き機能が付いていてお湯がさめても再び温めて使えるので、水を無駄にせず節約できる」「シャワーが付いているバランス釜の場合は、シャワーだけ使用することができる」といったものがメリットに挙げられることがあります。
しかし、追い炊きできる、シャワーだけ使えるというのは、今の時代だと当たり前と思う人が多いと思いますので、メリットというほどのメリットとは考えにくいです。そのため、やはり何といっても家賃が安い物件が多いのが大きなメリットと感じる人が多いと思います。
お風呂に対するこだわりがなく、家賃を重視して賃貸物件を探す場合には、バランス釜が設置されている物件を検討してみてはいかがでしょうか。
バランス釜には蛇口やシャワーホースがついていて、浴槽の横に設置します。浴槽とバランス釜を浴室内に設置しなければいけないため、バランス釜の横幅の分、設置できる浴槽が狭くなってしまいます。ゆったりと体を伸ばして入浴したい人には向いていません。
バランス釜はバーナーの容量が小さいため、水圧が弱くなります。そのため、シャワーや蛇口から出る水量が少なくなり、お風呂にお湯をためるのに時間がかかります。
構造上どうしても屋外と繋がっていることから、外気の影響を受けやすく、保温性が低くなります。特に冬場は外気温が低くなるため、お湯が冷めやすくなります。お湯を温めるのに何度も追い炊きをするとガス代が高くなってしまいます。
浴槽とバランス釜の間は、構造上、どうしても隙間が生まれてしまいます。隙間を掃除するのは簡単ではなく、かといって掃除をしないと湿気が溜まりやすい場所なのでカビが発生してしまいます。空気中のカビの胞子を吸い込むとアレルギーの原因になるなど健康への影響が懸念されます。
水を張り忘れたまま追い炊きをすると空焚きになってしまいます。空焚きをするとバランス釜に負担がかかり、最悪、釜が変形したり、排水管が焦げてしまうことがあります。火災の原因にもなりかねないため気を付けましょう。
使用時にガスが点火していることを、ランプの点灯や点火窓を覗いてきちんと確認しましょう。点火していないとガス漏れの危険があり、火災に繋がってしまう可能性もありますので気を付けましょう。
標準使用期間は10年です。
長年使用していると部品が劣化して故障が起きやすくなります。また、メーカーの給湯器部品の保有期間は製造終了から10年間となっているため、故障したときに部品が手に入りにくくなることから、10年以上使用している場合は交換を検討した方が良いです。
賃貸で入居した物件にバランス釜が設置されている場合は、設置されてから(使用してから)何年経っているか確認しておくと良いかもしれません。8年目のものより、2年目のものの方が経年劣化による故障のリスクが低いですから。
お風呂に入ろうとしたときに、お湯が付かない、お湯が出ないといことで、入れないのは嫌ですよね。最近では銭湯も少なくなっているので、シャワーも浴びれないとなると、どうすればいいか困ってしまいますよね。
また、使用して10年が経っていない場合でも、次のような場合は大きな故障の前兆かもしれないので、業者に確認してみましょう。
特に、点火するときに「ボンッ」という爆発音のような音がしたら注意しましょう。放置したまま使用を続けると故障したり、最悪、バランス釜が破裂します。
不動産管理会社か大家さんに故障の連絡をして対応してもらうことがほとんどだと思います。ただ、工事はご自身で立ち会う必要はあります。お住いの物件でどのような対応になるかは、きちんと不動産管理会社さんか大家さんに確認をしてください。
部品交換では対応できない賃貸物件の場合は、基本的には設置されているバランス釜の後継機に交換となる場合がほとんどです。後継機に交換するのが、もっとも費用を抑えられるからです。各給湯機器メーカーからバランス釜の後継モデルが販売されており、安全性が高められていますのでその点は安心ですね。
ご自身で業者を探して連絡をして修理や交換をしてもらうことになります。
バランス釜が故障した場合、交換方法は大きく、「今設置されているバランス釜の後継機に交換」「屋外設置型ガス給湯器に交換」「壁貫通型ガス給湯器に交換」「ユニットバスに交換」の4つがあります。
後継機のバランス釜に交換する以外の方法の場合、浴槽もあわせて交換する(バランス釜を設置している横幅分、浴槽を広くできるメリットを活かすため)ことが多いので、そうなると浴槽の分、費用が追加でかかることになります。
また、設置に必要な電源がなければ電気工事が必要になったり、配管工事が必要になったりと、単純に給湯器部分を交換するだけとはならず費用がかかってくるので、注意が必要です。家族構成や今後のお風呂の使い方などを踏まえて、どの交換方法が適しているか、業者とも相談して決めることをお薦めします。
(それぞれの交換方法や内容は、現在記事で作成中です。)
バランス釜などの屋内に設置するガス風呂釜は特定ガス消費機器に指定されており、法令により有効な給排気設備の取付けが義務付けられています。給排気設備に不具合があると一酸化炭素中毒を引き起こす場合があるため、工事は「ガス消費機器設置工事監督者」という資格を持っている人の監督のもとで行う必要があります。
設置したガス消費機器には、ガス消費機器設置工事監督者の資格取得者の氏名と資格者番号、施工内容などを記入したシールを貼ります。
交換工事の際には、監督者は資格証の携帯が義務付けられていますので、資格証を確認すると安心して工事を任せられると思います。
バランス釜が使われている物件は少なくなってきてはいますが、当社でも不動産管理会社様からのご依頼でバランス釜の交換工事をすることがよくあります。
賃貸の場合は故障して初めて管理会社や大家さんに連絡する人が多いですが、交換時期のところに書いたとおり、故障の前兆があったら連絡するのが良いです。完全に故障してからとなると、お風呂に入れない日が出てきたり、最悪爆発することもありますから。
バランス釜に限った話ではありませんが、住宅設備は使用年数が長くなれば長くなるほど故障のリスクは高くなります。いつもとは違う異常を感じたら、「まぁいっか」「多分大丈夫だろ」とスルーせず、「もしかしたら故障?」ということも考えて、早め早めの対応をしていただけると安全にお使いいただけると思います。