空き家を買取で売却するメリデメ・不動産会社選びのポイント

2024年9月6日 |  コラム

近年、日本では空き家が増加の一途をたどっています。特に都市部では空き家が増加し、地域の景観や治安に悪影響を及ぼすなど空き家問題が深刻化しています。もしかしたら、この記事を読んでいる人の中にも、相続などで予期せず空き家を所有することになった方もいるでしょう。

空き家を売却したくても築年数が古くて老朽化が進んでいる物件だと、仲介による売却ではなかなか買主が見つからないケースが少なくありません。また、空き家のさらなる老朽化による倒壊の危険や近隣住民からのクレームを回避するために、空き家を解体して更地にすると固定資産税が増えてしまうことから、やむなく空き家のままにしているケースもあります。

空き家の売却には、一般の不動産売却にはない特有の難しさがあります。その結果、空き家を放置してしまっている方もいるでしょう。

この記事では、空き家の売却でお困りの方に、不動産会社が直接空き家を買い取る方法について、メリット・デメリットや具体的な流れ、不動産会社の選び方などを整理しましたので、参考にしていただけると幸いです。

空き家を所有し続けるデメリット・リスク

空き家を売却したいのに売るに売れず困っている方もいると思いますが、まず空き家を所有しつづけるデメリットやリスクからお伝えします。

空き家を所有していると、経済的な負担だけでなく、法的リスクや社会的なリスクも伴います。放置してしまうと、様々な問題を引き起こし、地域社会にも迷惑をかける可能性さえあります。

1.維持管理にコストがかかる

空き家でも、固定資産税・都市計画税や火災保険料、老朽化に伴う屋根や外壁の修繕費、空き家対策の防犯設備費用などがかかります。不動産管理会社に管理を委託する場合は、管理費がかかります。これらの費用が長期間に積み重なると、経済的な負担も大きくなります。

2.資産価値が減少する

空き家は長期間放置していると老朽化が進んでしまいます。その結果、建物の資産価値が減少してしまうので、売却価格が下がってしまいます。

3.固定資産税が増額する可能性がある

空き家は管理が不十分で危険な状態と判断されると、基準により特定空き家に指定される可能性があります。指定されると、住宅用地としての優遇措置が受けられなくなるため、固定資産税が大幅に増額されるだけでなく、自治体から建物の改修や解体などの改善を求める指導や命令を受ける可能性があります。

4.その他のリスク

空き家は、ネズミやゴキブリなどの害虫や野良猫などが侵入して衛生面の問題を引き起こしたり、老朽化していると地震や台風などの自然災害で倒壊する危険性があります。また、不法侵入や放火などの犯罪の温床になったり、盗難の被害にあうなど治安の悪化につながる可能性もあります。

これらは空き家の所有者だけでなく、近隣住民にも悪影響を与えてしまいます。放置された空き家はただでさえ地域の景観を損ね、地域の価値を下げてしまうため、近隣住民とトラブルになったり、クレームを受ける可能性があります。

仲介と買取の違い

不動産を売却する場合、不動産仲介と不動産買取の2つ方法があります。

不動産仲介は「不動産会社に、購入を希望する買主を見つけてもらって売却する方法」で、不動産買取は「不動産会社に、直接買い取ってもらう方法」です。

不動産仲介は、多くの場合、一般の人が居住目的で購入します。そのため、魅力のある物件であれば需要が高く、買主がすぐに見つかって成約できます。しかし、基本的に、買主が見つかって成約するまでにある程度時間と手間がかかります。

一方で不動産買取は、不動産会社(買取業者)が再販目的で購入します。不動産仲介と違って、広告活動や内見対応、買主との交渉が不要ですし、査定後すぐに契約できるため、成約までにかかる時間と手間が少なくなります。

空き家を買取で売却するメリット

空き家を仲介ではなく買取で売却するメリットは、次のとおりです。買取の一般的なメリットだけでなく、空き家特有のメリットもあります。

メリット1.迅速な売却が可能

空き家は、一般的に購入者が探しにくい物件です。仲介の場合、売却に時間がかかることが予想されますが、買取であれば、不動産会社や買取業者が直接買い取るため、スピーディーに売却手続きを進めることができます。また、現金での購入が可能なため、スピーディーに現金化できます。

メリット2.手間がかからない

仲介だと売却活動にあたって、空き家の掃除や不用品の処理をしたり、内覧の対応が必要になります。しかし買取は不動産会社や買取業者が買主になるため、内覧対応が必要ありません。また、買取後のリフォームを前提に買い取ってくれるため、見栄えを良くする修繕なども必要がありません。

メリット3.契約不適合責任が免責される

買主が不動産会社や買取業者のため、宅建業法40条の規定により、売買契約書に明記しない限り売主は建物に欠陥などの瑕疵があっても責任を負わない、契約不適合責任を免責されます。

買主である不動産会社や買取業者は、物件を調査して瑕疵の有無を確認しますが、故意または重大な過失で瑕疵を隠蔽している場合などは、契約不適合責任を負う可能性がありますので注意してください。

メリット4.残置物処分が不要の可能性がある

空き家内にある家財や不用品、ごみといった残置物は、仲介では残置物を処分してから売却するか、そのままで売却します。残置物があると、買主を探すのが難しくなる可能性があります。また、残置物の処分費用を価格交渉され、売却価格が下がる可能性があります。売主が処分する場合は、処分する物によって処理方法が異なるなど、処分にかかる労力が意外と大きくなります。

買取であれば、買取後に残置物を処分する形で買い取ってくれることが多く、残置物処分費用が買取費用から相殺されて減額又は不要になる可能性があります。

メリット5.特定空き家になる前に売却可能

これは一般的な買取のメリットではなく、空き家の買取固有のメリットになります。デメリット・リスクでも書きましたが、長く放置された空き家は、特定空き家として指定される可能性があります。特定空き家になると、固定資産税が大幅に増額されてしまいます。

特定空き家に指定される基準を満たさないようにするのが一番ですが、遠方に住んでいるなど管理が十分にできない状況であれば、買取で売却することで短期間で売却できるため、特定空き家に指定される前に売却が可能です。

空き家を買取で売却するデメリット

空き家を買取で売却するのはメリットだけかというと、デメリットもあります。

デメリット1.売却価格が相場より安くなる可能性

基本的なデメリットはこれです。一般的に仲介での売却と比べて買取価格は安くなります。

仲介であれば時間をかけることで、希望する売却金額で購入する買主が見つかる可能性があります。一方買取は、空き家の状態にもよりますが、不動産会社が物件を買取した後、リフォームして販売するのが一般的で、リフォーム費用を考慮して買取価格を決めるためです。

デメリット2.悪質な買取業者にあたる可能性

強いて言えばというデメリットになりますが、実際に悪質な業者もいますので、注意喚起の意味を込めて挙げておきます。悪質な業者に依頼すると、契約条件が不明瞭で後から思わぬ費用を請求される、不当に安い価格で買い叩かれる、契約を解除したくても高額な違約金を請求される、といったことが起きる可能性があります。

悪徳業者に依頼しないためには、複数の業者に査定の依頼して、慎重に業者を選ぶ必要があります。

不動産買取がおススメな空き家の特徴

空き家を買取で売却するメリットとデメリットをお伝えしましたが、切り口を変えて、物件の特徴から買取がおススメな空き家についてお伝えします。

1.築年数が古く、老朽化が進んでいる物件

購入した後に大規模なリフォームが必要な空き家は、リフォームの手間や費用がかかることから購入をためらわれやすくなるためです。

2.立地条件が悪い物件

駅から遠かったり、スーパーマーケットなどの買物施設が少なかったり、近くに河川があって水害リスクがあったり、鉄道や工場の騒音問題があるなど周辺環境が悪かったりする物件は、購入に懸念をもたれることが多いためです。

3.特殊な間取りや構造の物件

狭小地や傾斜地など土地が特殊な形状だったり、古民家のような築古物件だったりすると、一般的な間取りとは異なる間取りや、特殊な構造をしていることがあります。そういった物件は、生活動線が不便、リフォームが困難なため買い手が限られてしまいやすいためです。

4.空き家として長く放置されている物件

繰り返しになりますが、空き家として長く放置され、周辺の生活環境や景観を損なうおそれがある場合、基準を満たすと特定空き家に指定され、住宅用地としての優遇措置が受けられなくなります。現状の管理状況だと特定空き家への指定可能性が否定できない場合、スピード感を重視して対応する必要があるためです。

空き家買取の流れ

空き家の買取りの流れは、大きく次のような流れで進みます。

① 不動産会社を探す

空き家の買取を相談する不動産会社を探します。

② 不動産会社に買取査定を依頼する

不動産会社に空き家の査定を依頼します。

査定には、机上査定と訪問査定の2つあります。机上査定は、物件の情報や過去の取引事例などを基に、おおよその査定額を算出します。訪問査定は、現地を訪れて物件の構造、設備の状況、周辺環境など詳細に調査した上で、査定額を算出します。

何社かに机上査定を依頼して概算の査定額を把握した後、気になる会社に訪問査定を依頼すると安心です。

③ 買取金額を交渉する

不動産会社から正式な買取金額が提示されたら、実際の買取金額の交渉をします。他社の査定金額などを材料に、自分が納得して依頼できるように交渉しましょう。

④ 売買契約を締結する

買取を依頼する不動産会社を決めて、売買契約を締結します。買取金額や決済日、引き渡し日など、売買条件を具体的に定めた契約書を作成します。売買契約が成立すると、不動産会社から買取金額の5~10%が手付金として支払われます。

なお、不動産会社はシンプルに買取金額で決めるより、金額以外のサービス面や実績、担当者の対応などを含めて総合的に決める方が後々後悔することがありません。

⑤ 不動産を引き渡して代金を受け取る

不動産を引き渡して、不動産会社から残金が支払われます。

買取を依頼する不動産会社選びのポイント

買取の実績やクチコミを確認するというのもありますが、次のポイントを踏まえて不動産会社を選ぶと良いです。

ポイント1.親身に相談に乗って最適な提案をしてくれる

なんだかんだ、やはり買取の相談をしたときに親身に対応してくれる会社が良いですよね。一言で空き家といっても、空き家の状態は千差万別です。

例えば、「老朽化が進んでいてリフォームが難しい場合、リフォーム費用がかかり、買取価格が下がってしまう可能性があります。しかし、解体して更地にすることで、より高く買い取ることができる。」「築年数が古い物件の場合、リフォーム費用がかかるだけでなく、耐震性や設備面で問題がある可能性があります。古屋付き土地として、土地の価値を評価することで買い取ることができる。」といった提案をしてくれる会社は信用できるでしょう。

ポイント2.買取価格の根拠を明確に示してくれる

買取価格が一番高い会社に買取を依頼したくなると思いますが、あまりにも他社より高い買取価格を提示してくる場合は注意が必要です。正直、不動産会社や買取会社によって買取価格がそこまで大きく変わることはないからです。

そのため、買取価格に関わらず、根拠を明確に示してくれる、説明してくれる会社が安心です。例えば、「リフォーム費用や解体費用、残置物処分の費用などを自社で対応できるため、外注するマージン分を節約できて買取価格に反映できる」などです。

ポイント3.買取保証の相談にも乗ってもらえる

買取保証は、契約時に定めた期間、仲介で空き家の売却活動をします。期間内に売却できない場合、不動産会社から当初提示された査定額で買い取ってもらえるというものです。

最初に仲介で売却活動をすることで、希望の売却価格で購入したい買主を見つけられる可能性があります。買主が見つからない場合は買取してもらえますので、安心して空き家の売却ができます。すぐにでも現金化したいという場合でなければ、不動産会社に相談してみると良いです。

空き家の売却に必要な費用

不動産仲介でも不動産買取でも同じですが、空き家を売却するときに必要な必要は、次のとおりです。

① 印紙税

売買契約書の作成にあたり、売買代金に応じて収入印紙を貼付する必要があります。

② 不動産登記費用

不動産の所有権移転登記を行うために、登録免許税が必要になります。

③ 譲渡所得税・住民税

空き家を売却して利益が出たときは、譲渡所得税と住民税を支払う必要があります。ただし、譲渡所得が特別控除の範囲内であれば税金がかからない場合もあります。

まとめ

空き家を売却したくてもなかなか売却できず、空き家を所有しつづけている場合に、不動産会社に直接買い取ってもらう買取で売却するメリット、デメリット、依頼する不動産会社の選び方のポイントなどをお伝えしてきました。

空き家を所有していても、きちんと管理ができる状態なら良いですが、遠方に住んでいてほとんど行くことができなかったり、管理会社に管理を委託しない場合は、空き家を所有するデメリット・リスクに書いたような事態にならないよう、注意が必要です。

空き家問題は年々深刻化しているので、今後、空き家法がより厳しい方向に改正されていく可能性は十分にあります。ご自身が何か不利益を被ったり、ましてや近隣住民の方に迷惑をかけてトラブルにならないよう、所有する以上は管理を徹底しましょう。

管理が難しい場合は、早めに売却できるに越したことはないので、仲介ではなく買取での売却を選択肢の一つとして検討してみると良いです。まずは選び方のポイントを参考にして、信頼できる不動産会社を探しましょう。

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