2023年12月27日 | コラム
近年、空き家問題がテレビなどメディアで取り上げられるように、空き家は年々増えており問題は深刻化しています。自分は関係ないと思っていても、親が亡くなるなどして、空き家を相続することがあるかもしれません。
不動産の相続は、どうしてもお金に関係するので、相続税が一番の関心事になる人が多いですが、他にも知っておくと良いことがあります。たとえば、空き家を相続した場合にすぐに確認した方が良いことを知っていますか?自分では住まないので売却したい場合に、どのように検討すると良いか知っていますか?
不動産会社視点で知っておくと良いことをお伝えしていますので、最後まで読んでいただき、参考にしてください。
まず、実際にどのくらい空き家があるかを見ていきましょう。
空き家の戸数は、総務省の「住宅・土地統計調査」で知ることができます。この調査は、5年に1回行われており、現在公表されている最新の結果は平成30年のものになります。令和5年に調査が行われていますが、結果は令和6年の9月末頃に公表されます。
(総務省「平成30年住宅・土地統計調査」の調査結果はこちらから参照ください)
ということで、平成30年の調査での数字になりますが、気になる空き家の数は・・・
約849戸です。
本当に?めちゃくちゃ多いじゃん!、、、
とはならないですよね?日本に全部でどのくらいの住宅数があるか分からないと、多いか少ないかよく分からないですから。
では、総住宅数はというと約6,241万戸です。
ということは、総住宅数の5.6%、つまり20戸に1戸以上は空き家になります。そう考えると、多いな~という感じではないでしょうか?
実際には、都市部と地方で空き家の比率が変わるので、住んでいる場所によっては実感がわかないかもしれません。しかし、ここで知っておくべきことは、空き家率が5%を超え、年々増加しているという事実です。
空き家は約849万戸と書きましたが、空き家のすべてが問題なわけではありません。
総務省の住宅・土地統計調査では、空き家は「賃貸用の住宅」、「売却用の住宅」、「二次的住宅」、「その他の住宅」の4つに分類されています。
「賃貸用の住宅」と「売却用の住宅」は、賃貸や売却のために空き家になっている不動産会社が管理している住宅です。「二次的住宅」は、別荘などで普段は住んでいないですが、所有者が管理している住宅です。つまり、これらの分類の空き家はなにかしら管理されているので、問題になっていません。
問題になっているのは、「その他の住宅」です。
住宅・土地統計調査では、「その他の住宅」は次のように定義されています。
賃貸用の住宅、売却用の住宅、二次的住宅以外の空き家で、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅のほか、空き家の区分の判断が困難な住宅などを含む
つまり、人が住んでおらず、所有者による管理がされていない、または管理が不十分な住宅ということです。あなたの家の近くにも、もしかしたら空き家で放置された住宅があるかもしれません。かなり古い木造住宅で、庭の木が伸び放題で日が当たらず、なんだか不気味な感じがする、いつ倒壊してもおかしくなそう・・・そんな空き家が私の駅までの通勤途中にも数軒あります。
管理がされていない、管理が不十分な住宅が、いろいろな問題を引き起こしそうなのは、なんとなく想像できますよね?
そんな「その他の住宅」に分類されている空き家は、約849万戸のうち、約349万戸あります。空き家総数の41.1%になり、平成25年(2013年)の調査結果と比べて、9.5%増加しています。超高齢化社会に突入している日本ですから、令和5年(2023年)の調査では、さらにハイペースで増えている結果になるのではないでしょうか。
たしかに近所にポツポツ空き家を見かけるな。でも、自分が空き家を所有することなんか無いんじゃないか?と思う人もいると思います。そこで、次に、その可能性について見ていきましょう。
行政は縦割りなので、「空き家」の調査も省庁によって、所管している内容ごとに異なる調査を実施しています。国土交通省では「空き家所有者実態調査」を実施していて、実際に空き家を所有している人への調査結果を知ることができます。
令和元年の調査の中に、空き家を取得した経緯に関する記載があります。
一番は相続で、54.6%になります。まぁ、なんとなく想像どおりかもしれませんが。
(令和元年空き家所有者実態調査報告書はこちらから参照ください)
この調査は、実際に空き家を所有している人、と書きました。
え?相続したあとに、売却や賃貸とかしていないの?と思った人もいるでしょう。ところが、このあたりは難しくて、子どものころに住んでいたために思い入れがあって売らない(心理的に売れない)人もいます。複数人で相続して、もめてしまって売却や賃貸したいのにできない人もいます。
その結果、相続した実家を空き家として所有しつづける(しつづけざるを得ない)ことになります。
今度は内閣府の白書です。少し古いですが「平成25年版の高齢社会白書」によると、団塊の世代の持ち家率は86.2%と非常に高くなっています。住居の形態別では、「持家(一戸建て)」が75.3%であり、「持家(分譲マンション等の集合住宅)」10.9%となっています。
(平成25年版の高齢社会白書 第1章第3節5 団塊の世代の住居はこちらから参照ください)
親が団塊の世代という人は、実家は持ち家の一戸建てという人が多いと思います。でも、自分の持ち家がある、転居した先で仕事をしていて実家に戻れない、などいろんな理由があって親と同居していない人がほとんどではないでしょうか?
そういう人は、親が亡くなったとしても、相続した実家に住むことはほぼないでしょう。
団塊の世代による相続が増える時期がやってくると、実家の一戸建てを相続する人が増えるのは間違いありません。相続しても売却や賃貸などスムーズにできれば問題ありませんが、そうでないケースもある以上、空き家はさらに増える可能性が高いですよね。
不動産視点で、気を付けた方が良い実家の相続があります。
それは、親が亡くなる前に長期間空き家になっている実家の相続です。
ご存じのとおり、自宅で最期まで過ごして、、、という人ばかりではありません。老人ホームに入居したり、病院に入院したりした後に亡くなる、というケースもあります。長期間自宅を不在している空き家状態の実家を相続することも、可能性としては結構ありそうですよね?
自宅を不在にしている期間が短期間なら問題ないです。
何年も自宅を不在にしていて、家族も遠方に住んでいて、たまに実家に行って掃除をするなどできないと、管理がまったくできていない状態になってしまいます。
こうなると、問題が起きてしまう可能性があります。
自分で住む、売却する、賃貸する、、、何にせよ問題になってしまうことが起きる可能性があります。
まずは漏水です。
もし親が亡くなって料金の未払いが発生したとしても、水道はすぐには止まりません。電気とガスは2、3か月程度で止められますが、水道は意外と長くて半年くらいは止まりません。そうすると、給水管に配水水圧がかかっている状態のままです。
給水管はいくつかの管をつなげて水を運んでいる場合があって、そうすると管と管の繋ぎ目部分はどうしても強度的に弱くなります。経年劣化の状況も関係してきますが、繋ぎ目部分から漏水する可能性があります。さらに、漏水による被害として、床や壁の木材が腐食したり、湿気が原因でシロアリが発生することもあります。
空き家で漏水すると、漏水していることに気づきませんので、被害が大きくなってしまいがちです。被害の範囲が広ければ広いほど、補修のためのリフォーム費用も高くなります。
長期間不在になっていた実家を相続したら、水道・電気・ガスといったライフラインの状況を確認しましょう。そして、必要なら手続きをするようにしましょう。
もちろん漏水などの問題が発生しないに越したことはないので、親が老人ホームに入居したり病院に入院したりなど、長期間実家を空けることが分かったら、少なくとも水道の止水栓(元栓)は実家に行って閉めると良いです。止水栓(元栓)は、メーターボックス内にあります。
ちなみに漏水の個所や状況によっては、漏水による水道料金が大変なことになったらどうしよう・・・と心配ですよね。
漏水が原因であれば市町村によって異なる部分はありますが、減免制度があります。市町村の指定給水工事会社であれば漏水証明書を発行することができます。当社も横浜市や川崎市など複数の市町村で指定を受けています。
長い間不在にしていると、どうしてもごみの問題が出てきます。
実際、数年間不在の相続物件の残置物処分をすると、結構、大変な思いをすることがあります。
電気が止まって冷蔵庫内の食材などが腐っている、キッチンの三角コーナーに生ごみが入ったまま、ごみ箱のごみがそのまま、といったように生活感がそのまま残っているような場合もあります。長期間不在にすると分かったら、冷蔵庫の庫内を空にしたり、ごみを片付けておくに越したことはありません。
もちろん難しいケースもあって、突然、入院する場合はどうにもならないですよね。
また、長期間換気ができていないと湿気がこもります。マンションでは24時間換気システムがあって換気できたりしますが、築年数の古い一戸建ての場合はそういうシステムはありません。そうすると湿気がこもってしまい、押し入れやクローゼットの中の布団や衣類などがカビてしまいます(布団や衣類などだけではなく、もちろん湿気の状態次第では、建物にも影響が出ます)。
ごみとして処分しようと思っても、粗大ごみと普通ごみで回収が違ったり、ごみ処理施設に持ち込むにしても近くになかったり、廃品回収業者や不用品買取業者に依頼するのも、回収・買取できる種類が業者によって違ったり、なんだかんだと手間になります。
売却や賃貸すると決めていて、不動産会社に依頼するのであれば、当社と同様に、リフォームできる建築業許可をもっていて、残置物の処分もやってくれる不動産会社を探すと手間が省けます。
次はちょっとお堅い話です。不動産と切っても切り離せない登記についてです。
不動産を相続した場合、今までは、登記変更は義務になっていませんでした。手続きを放置しても罰則がないので、登記変更しない人がいました。登記変更をしないということは、不動産の名義人が被相続人のままですから、誰がその不動産を相続したのか分かりません。
現在の不動産の所有者が分からないのはいろいろと問題があるということで、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されることになりました。
このあたりは検索すると、登記の専門家である司法書士さんが詳細な説明をしているページが見つかると思いますので、サラっとポイントだけお伝えします。
今までも、名義人を変更していなければ、相続した不動産を売却できませんでしたし、リフォームの場合でも相続登記が必要な場合があったり、解体して更地にする場合は建物の滅失登記の手続きが必要だったり、登記変更はした方が良いものではありましたが。
相続登記が義務化されると現在の不動産の所有者が明確になります。隣地が空き家で自分の家に問題が起きても、所有者が分からないという事態が無くなります。逆を言えば、管理責任を問われることにならないよう、空き家であってもしっかり管理しないと困るケースが出てくるということです。
つぎは、さらに難しい、何のことかよく分かりにくい税金の話です。
空き家に限った話ではありませんが、不動産を相続したら売却しようと考えている人は、知っておくべき売却時期があります。
それは、相続発生から3年10カ月以内です。
実家の譲渡所得を計算するにあたって、相続税額の一部を取得費に加算することで、譲渡所得にかかる税金を軽減できるというルール(「取得費加算特例」と言う)が使えるからです。制度の詳細は税理士さんが説明しているページがたくさんありますので、そちらに譲ります。
ざっくりした説明をすると、支払った相続税の一部を、不動産の取得費に加算できるというものです。加算できる金額×不動産売却時の税率(20.315%)をした金額を節税できるということですね。
空き家を相続したとして、売却や賃貸などをせずに、とりあえず放置しておくとどんなデメリットがあるのか知っておきましょう。
2023年6月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正されました。法律が関係すると、名前だけでも何だか難しそうで、げんなりしますよね。
先に結論をお伝えすると、場合によっては固定資産税が6倍になる可能性があります。
持ち家の方は知っていると思いますが、不動産には毎年、固定資産税と自治体によっては都市計画税が課されます。この固定資産税と都市計画税は、住宅用は減額されているのです。空き家を相続して、空き家のまま放置したとしても、住宅用であれば減額された税金になるので、放置する例が後を絶ちませんでした。
私からすれば、減額された額でも固定資産税の負担は大きいので払いたくないですが・・・
でも、空き家が増えて社会問題化したので、国としてもこれはマズイということで、管理が不十分で倒壊の恐れがあったり、衛生的に問題だったり、景観を著しく損なっていたりなどの要件を満たす危険な状態の住宅は、「特定空き家」として減額しないよ!という法律です。
この法律が改正されて、簡単に言うと、減額の対象とならない空き家の対象範囲が拡大されました。「特定空き家」に認定されていなくても、管理が不十分な空き家も「管理不全空き家」として、減額されない可能性があるということです。
特定空き家と同様に、いきなり「管理不全空き家」に指定されるわけではありません。さすがに、行政もそこまでご無体なことはできません。
なお、「特定空き家」までの認定の流れは以下のとおりです。
ちゃんと改善して認定を回避できる流れになっていますよね。
まずは何よりも、相続した空き家をそのまま放置しないことです。
空き家と絡めて実家を相続したらということでここまで書いてきましたが、そもそも相続放棄するという選択肢もあります。これは被相続人との関係性だったり、債務の問題だったり、いろんな理由があると思いますが、必ず相続しないといけないというわけではありません。
ここまでの流れから、自分で住むというケースは少ないと思いますが、自分や親族が住むという選択肢があります。そうでなければ、売却するか賃貸するかという選択肢ですね。売却に関しては、場合によっては建物を解体して更地にする方が良い場合もあります。
あとは、国に寄付するという選択肢。相続土地国庫帰属制度というのが2023年4月27日から施行されています。どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではなく、一定の要件はあり、また負担金の支払いが必要になります。これはややこしいので、詳細は省きます。
売却すると決めた場合は、費用対効果から最適な売却方法を検討することが大切です。
建物の状態が良く、ルームクリーニングをすることで販売できそうであれば、それで販売します。
長期間空き家を相続した場合のところで書いたような、漏水、それに伴う床や壁の木材の補修が必要な場合はもちろんのこと、築年数にもよりますが傷んでしまって補修が必要な個所、あと衛生的に気にする人が多い水まわりといった部分をリフォームして販売します。
販売方法2を選択したときに、内容によってはリフォーム費用が高額になることがあります。その場合は冷静に費用対効果を見極める必要があります。地理的に更地にしても売れる場所で、解体して更地で販売する方が手元に入る金額が多くなるなら、更地にして販売します。
当たり前ですが、費用面は大切ですよね。もちろん、安かろう悪かろうでは意味がありませんが、安くて品質が良ければそれに越したことはありません。この場合であれば、リフォーム費用と解体して更地にする費用をいかに抑えられるかです。
不動産会社が建築会社にリフォームを依頼したり、解体業者に解体を依頼すると、どうしてもマージンの分、費用が高くなります。高額になるとマージン分だけでもかなり変わってくるので、リフォームと解体を自社施工できる不動産会社を選ぶと良いです。こういう不動産会社は結構あります。
また、水まわりのリフォームを含む場合は同様に、水道工事会社に依頼せず、上下水道の指定工事会社で、自社施工できる不動産会社を選ぶと良いです。ここまで一手に自社施工できる不動産会社はほとんどみないですね。
販売した後のアフターサービスも大切です。これは1の費用で書いた内容と、実は結構つながってきます。結局、別々の会社に依頼すると、あとで大変になるということです。
場合によっては、問い合わせしても、それはうちではない。〇〇を工事した会社さんに聞いてもらえますか?みたいにたらい回しにあう可能性だってあります。その点、1社に全部依頼できれば、何かあっても安心です。
いかがだったでしょうか?
実際に実家を相続する可能性がある人、高齢の親が老人ホームに入居して実家が空き家状態になっている人は、こちらの記事を参考にして、是非、親御さんはもちろんのこと、そのお住まいである不動産も大切にしてください。
問題が起こってからでは遅いです。元栓を閉めておけば、それだけで防げる漏水もあります。たまに実家に行って、換気や掃除をするだけでも防げることがあります。
当社は、リフォーム、解体、水まわり工事、すべて自社施工で対応できますので、実家を相続して不動産をどうするかお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。