2024年2月1日 | コラム
「瑕疵物件なんだけどそちらでなんとか売却できない?」と相談を受けることがあります。「売却したくても瑕疵物件なので、なかなか買い手が見つかりそうにない。」「不動産会社に買取をしてもらうにも、かなり安くなってしまいそう。」「でも、少しでも高く売りたい。」といった感じで、いくつか不動産会社にあたってみる、そういう方が多いと思います。
そういった方が瑕疵物件の売却を検討するときの参考にしてもらえればと思います。
本記事を読むことで以下の内容が分かります。
瑕疵物件というと、雨漏りするなど建物に何か問題がある物件やいわゆる事故物件をイメージする人が多いと思います。瑕疵物件といっても、実はいろいろな瑕疵があります。共通するのは物件に何かしらの瑕疵(欠陥や不具合)があるということです。そのため、通常の物件よりも買い手が見つかりにくい、売却までに時間がかかる、価格が相場より安くなってしまう傾向があります。
瑕疵物件は4つの種類に分けることができます。「心理的瑕疵物件」「物理的瑕疵物件」「法的瑕疵物件」「環境的瑕疵物件」の4つです。
心理的瑕疵物件という言葉は聞いたことがないかもしれません。事故物件という言葉なら聞いたことがありますよね?これは、不動産の物理的・機能的な欠陥や不具合ではなく、心理的な抵抗やストレス、負担を与える物件を言います。
具体的には、以下のような物件が心理的瑕疵物件になります。
近年では親と同居している世帯が減り、「子どもが離れて暮らしていて、実家に戻ったら親が亡くなっていた」という孤独死が増えています。自然死は基本的には心理的瑕疵にはなりません。しかし、亡くなってから一定の期間放置されていて、特殊清掃が必要になる状況だと、心理的瑕疵になってしまいます。
心理的瑕疵物件のポイントは、「心理的」という部分です。つまり、買主や借り主が心理的にどう感じるか?という気持ち・感じ方の問題になります。そのため、売却を検討する場合は、どのようにしたら少しでも買い手が心理的に和らぐのかを考えて、気持ちの部分を補っていくことが大切です。
物理的瑕疵物件は、4つの瑕疵の中で一番イメージしやすいと思います。文字どおり、物理的な欠陥や機能的な欠陥がある物件のことを言います。
具体的には、以下のような物件が物理的瑕疵物件になります。
物理的瑕疵は心理的瑕疵と違って、改修・修繕工事等を行うことで欠陥や不具合を解消することができます。売却を検討する場合、雨漏りをしたままとか、耐震強度が不足したままで買う人はいませんので、リフォームをして売却することが一般的です。
法的瑕疵物件とは、法令に違反している、または法令によって自由な利用が阻害されている物件のことを言います。
具体的には、以下のような物件が法的瑕疵物件になります。
建築確認を受けてから工事をするため、新築物件では法的瑕疵物件はほぼ存在しません。もし法令に違反した物件を建築すると違法建築になってしまいます。建築基準法や都市計画法、消防法などの関連法令が施行される以前に建築された物件には、例外規定や救済措置もあります。
法的瑕疵物件は違法建築物であるため、買主は住宅ローンの審査がおりず自己資金で購入しなければなりません。また、再建築不可物件の場合、建物を解体すると建て替えができません。そのため、売却を検討する場合、違法建築物のまま売却するのは難しいので、違法部分の改築をして適法状態にしてから売却したり、再建築不可物件でなければ解体して更地にして売却するなどする必要があります。
環境的瑕疵物件とは、建物としては問題ない物件ではあるものの、周囲の環境によって安全で快適な生活を阻害されている物件のことを言います。
具体的には、以下のような物件が環境的瑕疵物件になります。
環境的瑕疵物件は心理的瑕疵物件と同様に、不動産の物理的・機能的な欠陥や不具合ではなく、人の感じ方・気持ちの部分で不安や嫌悪を感じる瑕疵になります。そのため、売却を検討する場合は、買い手の心理的負担を踏まえて、その部分を補っていくことが大切です。
一般的に言われている売却価格の相場をお伝えします。実際には、個別の瑕疵内容や需要と供給、物件のある地域など様々な要因によって変わってきますので、あくまで参考程度に見てください。
市場価格のおよそ「50~90%」と言われています。きちんとお祓いをして撮影したものを見せるなど、気持ち的に少しでも和らいでもらう工夫が必要になります。事件や事故があってからある程度年月が経過するということも、気持ち的に和らぐことになります。
物理的瑕疵物件の売却価格相場は、市場価格のおよそ「50~80%」と言われています。ただ一般的には、仲介で売却するならリフォームをしてから売却します。不動産会社の買取であれば、買い取ったあとに不動産会社がリフォームをしてから売却します。
法的瑕疵物件の売却価格の相場は、市場価格のおよそ「50~70%」と言われています。
環境的瑕疵物件の売却価格の相場は、市場価格のおよそ「70~80%」と言われています。環境的瑕疵はその原因を根本的に解消することは難しいため、価格面で気持ちの部分を補っていくことになります。
瑕疵物件を売却するには、仲介と買取という2つの方法があります。不動産会社に売却の依頼することは、人生でそう何度もあることではありません。そのため、言葉としては聞いたことがあっても、違いやメリット・デメリットは分からない方もいると思いますので説明します。
仲介と買取の違いは、すごくシンプルです。
仲介は、不動産(仲介)業者を介して、一般の人や企業を買い手として探す方法です。
買取は、不動産会社が直接買い取る方法です。
仲介が良いか、買取が良いかは、お客様の求めることによって変わります。たとえば、「経済状況からすぐに現金が必要」、「リフォームをしてから売却するにもリフォーム費用の負担がきつい」といった場合は、不動産会社に買取をしてもらう方が良いです。一方で、経済的に余裕があって、時間がかかっても少しでも高く売却したければ、仲介で売却する方が良いです。
以下に記載するメリット・デメリットも参考にしてください。
瑕疵物件だからといって特別な売却のプロセスはありません。基本的に、通常の物件の仲介と買取のプロセスと同じになります。
仲介は、「現地調査」→「無料査定」→「媒介契約」→「販売活動」→「売買契約」→「引き渡し」
買取は、「現地調査」→「無料査定」→「売買契約」→「引き渡し」
仲介と買取の違いとしては、仲介の場合は、仲介業者と媒介契約を締結して、広告宣伝などの販売活動をしてもらって、買い手が見つかれば売買契約を締結して引き渡しをしますが、買取の場合は、査定額で問題なければ不動産会社と売買契約を締結して引き渡しとシンプルになります。
プロセスは同じと書きましたが、瑕疵物件の売却では注意すべき点があります。それは、売却にあたって、瑕疵の内容を正確に告知する義務があるということです。プロセスで言うと、売買契約のところで、きちんと瑕疵について重要事項説明として明記しなければなりません。
売主は、物件の瑕疵の内容を、買主に対して正確に情報提供する法的な責任を負います。これが告知義務です。「本当は瑕疵があることを分かっていたけど、買主が気付いていないから黙って売却してしまおう」、というのはダメです。これは告知義務違反になります。
告知義務違反をすると、物件を売却後に瑕疵が見つかった場合、買主は売主に対して、瑕疵に対する補修請求(欠陥や不具合の補修)や減額請求(購入代金の減額)を受ける可能性があります。場合によっては契約解除や損害賠償請求になることもあります。
不動産の売却では、売主が買主に対して瑕疵があった場合に契約不適合責任を負います。以前は瑕疵担保責任と呼ばれていましたが、2020年4月の民法改正で変更になりました。
契約不適合責任は、売主は売買契約の内容にあった物件を引き渡す義務を負っていますが、引き渡した物件が「契約内容に適合していない」と、その責任が問われることになります。売買契約書に売却する不動産に瑕疵があるのであれば、不動産の状況を明記し、契約条件等をしっかり記載することが大切です。
契約不適合があると、告知義務違反と同様に、補償請求、減額請求、損害賠償請求、契約解除になる可能性があります。
告知義務違反の場合は告知義務が果たされなかったことが原因となり、契約不適合責任の場合は契約内容に不適合があることが原因となって、各請求などが行われます。原因の違いであって、両方とも請求や対処手段は基本的に同じと考えて良いです。
ここまで瑕疵物件の売却について、一般的な内容をお伝えしてきましたが、いよいよ、他ではあまりお伝えしていない、本当に重要な1つことをお伝えします。
仲介で売却するにも、不動産会社に買取してもらうにしても、少しでも高く売りたいと売主さんは思うはずです。そのため、瑕疵物件に関する専門知識や実績が多い会社や高く売却できる、高価買取する、と謳っている会社を探したりするわけですが、その前に、重要なことがあります。
ズバリ、「本当に瑕疵物件なのか見極めること」です。
お客様から瑕疵物件なんですけど・・・と相談されると、不動産会社も瑕疵物件として売却する提案をしてしまいがちですが、「本当に瑕疵があるのか?」から入ることが本当に重要です。
瑕疵物件かどうかを調べるのには、時間と労力がかかります。しかし、瑕疵物件として売却するのと、通常物件として売却するのでは、価格が大きく変わってきます。そのため、お客様ご自身のためにも、現地の調査や役所での確認などをしっかりやると良いです。
売却・買取の相談に対して、「本当に瑕疵か?」から確認してくれる提案をしてくれるかどうかが、不動産会社選びのポイントと言えるでしょう。
当社で実際にあった、当初は瑕疵物件と思われたけど瑕疵物件ではなく、売却できた事例を紹介します。
瑕疵物件の売却相談で当社に一番多いのは、法的瑕疵物件の不適合接道です。
不適合接道とはなにか、簡単に説明します。建築基準法で住宅などの建築物の敷地は、幅員4m以上の「建築基準法で定められた道路」に2m以上接していなければならない、接道義務というものがあります。不適合接道は、その義務を満たしていない物件になります。
あるとき、弁護士さんから瑕疵物件なんだけど、なんとか三共住販で売れないかと相談がありました。市役所からは、建築基準法上の道路ではないと言われているとのことでした。
当社では、瑕疵物件については、まずは「本当に瑕疵なのか?」を調べることから始めます。
この事例では、「本当に不適合接道なのか?」から調べました。横浜市内の物件は、市が提供するiマッピーというシステムで、建築基準法上の道路種別を見ることができるので、それで道路の確認をしました。
いろいろと調べてみると、物件が接する道路は建築基準法ができる以前からあるように思えました。そこで、神奈川県の情報公開室では有料になりますが、航空写真を提供しているので、建築基準法ができる以前の年の航空写真を取得しました。航空写真には、家と道路が写っていました。
接道義務は例外として、建築基準法42条2項が定められる以前から存在している道路を2項道路と言い、建築基準法上の道路とみなす、とされています。他にも、たとえば43条但し書きというのがあって、建築審査会の許可受けることで建築が認められる道路もあります。これは救済措置的なものになります。
ということで、市役所と相談して2項道路と認められ、法的瑕疵物件ではなくなりましたので、無事に売ることができました。
このように、「本当に瑕疵なのか?」「救済措置を受けられないか?」ということを、手間暇はかかりますが、しっかり調べることが大切です。
瑕疵物件には4種類あり、それぞれの具体例や参考としての売却価格をお伝えしました。また、仲介と買取の違いが分からない場合のために、違いとメリット・デメリット、売却の流れを説明しました。さらに、瑕疵物件の売却にあたって注意すべき点として、告知義務と契約不適合責任の説明をし、最後に「本当に瑕疵か?」から調べることが重要だとお伝えしました。
瑕疵物件として売却となると、たとえば、「これは瑕疵物件だから500万円でしか買えませんよ」となる。でも、本当に瑕疵か?例外ではないか?救済措置はないか?を調べることで、実は例外や救済措置によって瑕疵ではないと分かれば、1,000万円で売ることができます。
当社では、時間や労力がかかってもきちんと調べることで、お客様の物件を高く売る、高く買取ることができます。やはり、手間暇を惜しまずにお客様に喜んでいただけるように動くことが大切です。瑕疵物件の売却でお悩みがありましたら、一度ご相談ください。