2023年10月30日 | 水まわり工事事例
集合住宅の排水管洗浄と老朽化した排水管の更新工事を実施しました。
不動産管理会社さんから、排水管の詰まり解消のご依頼をいただきました。
排水管の詰まりということで、最初は入居者さんが油を流して詰まってしまったなど、何かしらの汚れによる詰まりを想定していました。ところが話を聞いてみると、状況が違っていました。
すでに業者に依頼して排水管の高圧洗浄を実施して、その場ではスムーズに流れるようになったものの、すぐに居住者さんから「トイレの流れが悪い」、「お風呂の水がスムーズに排水されない」といった苦情が出て困っている。繰り返し排水管が詰まるからには、何か根本的な原因があるはず。大家さんにも負担をかけられないということで、当社に詰まりの根本原因の究明と解消のご依頼をいただいたのです。
まずは根本原因となっている詰まりが発生している場所を特定しました。
伺った話とこれまでの経験から、闇雲に探すのではなく詰まり箇所の見極めをして、排水桝(点検口)の蓋を開けて詰まりがないか点検していきました。
排水桝に汚れが溜まっている箇所が見つかったので、ファイバースコープで排水管の中の汚れを確認して、詰まりの個所を特定しました。
屋外排水管の勾配不良が根本原因でした。
勾配不良が原因で、汚れが溜まって固まってしまい、詰まりが起きていたのです。人間の体で例えるなら、血管が動脈硬化で詰まるようなものです。
勾配不良とは何かというと、排水管は汚水を流すのに緩やかに低い方に傾斜をつけて配管されていますが、この傾斜が勾配で、傾斜に問題がある状態です。
勾配が急すぎると水だけ先に流れて汚物が取り残されてしまいますし、勾配が緩すぎたりフラットになると流れが遅くなり汚物が付着してしまいます。勾配が低い方から高い方に傾斜する逆勾配になると、水が流れにくくなり汚れが滞留しやすくなります。
勾配不良が起きる原因は、設計ミスや施工ミス、修理時のミスといった人為的なミスから、排水管の老朽化や地震や軟弱地盤の影響など、いろいろあります。
当社のこれまでの経験では勾配不良の原因として、具体的に次のようなケースがあります。
・土間の亀裂などから入った雨が排水管周りの土を流してしまい、排水管の重さで下がってしまう
・老朽化により排水桝と排水管のつなぎ部に隙間ができて土を流してしまい、排水管が下がってしまう
今回は勾配不良が原因でしたが、排水管が詰まる原因は、勾配不良以外は主に次の4つになります。
詰まりの原因の約8割が、汚れの堆積です。
汚れとは、排泄物などの汚物、油、髪の毛、変質した洗剤など、様々なものがあります。汚れが堆積すると、汚れが固まって詰まりを引き起こします。
敷地内に植えられた植物や木の根が、排水桝と排水管のつなぎ部にできた隙間から入り込むことがあります。入り込んだ根は排水管内の水分や栄養分で成長し、根が排水管内部に絡まって、詰まりを引き起こします。
排水桝と排水管のつなぎ部が外れてしまうことがあります。排水管が外れた部分から汚水が漏れることで、周辺の土が水分で緩くなってさらに沈下していき、詰まりを引き起こします。
地震や地盤の変動、老朽化によって、排水管が破損することがあります。排水管が破損することで、ここまでに記載したような破損箇所に汚れが堆積したり、破損箇所から根が入り込んだり、汚水が漏れて沈下したり、水圧が低下してしまうなどにより、詰まりを引き起こします。
詰まりの原因の大きなものは以上のとおりですが、意外に思われるかもしれない詰まりの具体例をご紹介します。
結構多いのが、カップラーメンのラードです。学生さんの1人暮らしが多かったり、カップラーメンを食べる人が多い集合住宅の場合は、台所で捨てたカップラーメンの残り汁が原因で排水管が詰まることがあるので、定期的な洗浄をすると安心です。
もう1つは、トイレです。近年のトイレは、節水型トイレが主流になっています。節水型なので流量が少なく、トイレットペーパーが流れにくくなります。トイレットペーパーを多く使うと、流れずに詰まってしまうことなります。
排水管の詰まりを解消するには、高圧洗浄を行います。今回は勾配不良が根本原因でしたので、高圧洗浄と一緒に勾配を直す必要があります。排水管に経年劣化があったため、排水管を入れ替え、勾配を直して配管しました。
排水管内の汚れを除去するために高圧洗浄をしました。
排水管の高圧洗浄とは、高圧洗浄機を使って高圧の水を噴射して、水の勢いを利用して排水管内に付着した汚れを落とす作業です。
通常の排水管掃除では取れないような、排水管の奥の方のこびりついた頑固な汚れまで除去できるため、詰まりや臭いを改善できます。また、洗剤や薬剤なども使わず、水の力だけで汚れを落とすことができ、スピーディーな掃除ができます。
入れ替える排水管が配管されている部分のコンクリートや土を剥がし、入れ替える排水管を取り除き、勾配を確認しながら新しい排水管を据え付けました。
<特定した詰まり箇所>
<排水管の掘り出し1>
<排水管の掘り出し2>
<排水管の取り外し>
<排水管の取り付け>
<排水管の埋め戻し>
<排水管入れ替え完成1>
<排水管入れ替え完成2>
排水管の入れ替え工事では、居住者さんが水まわりを工事中使えなくなりますので、事前に工事日時をお知らせして実施しました。コロナ禍で在宅ワークをする方が増えているので、なるべく影響が少ないであろう曜日と日時を調整しました。
排水管が詰まると、水が流れにくくなったり、ひどくなるとトイレで汚水が逆流したり、悪臭がするなど、入居者さんに不快な思いをさせてしまうことになります。また、詰まりが起こってしまうと余計に費用がかかることになります。
さらに、排水管に汚れが蓄積していると、排水管の経年劣化を早めてしまいます。排水管を長く使い続けるためにも、定期的な高圧洗浄による清掃は有効です。
上記のような事態を避けるためにも、年に1回か2年に1回は、定期的に高圧洗浄することが予防的には有効と言えます。
最小限の工事で済ませること。これは当社のこだわりです。
前提として、お客様のご予算・ご要望をヒアリングして、あと数年で建て替えを考えているのか、まだまだ長く使い続けるかによって、適切な工事内容をご提案することが大切です。
そのうえで、ご予算・ご要望によっては、「詰まっている」「勾配が悪くなっている」箇所を特定して、入れ替える必要があります。工事としては排水管をすべて入れ替えるのは簡単で、箇所を特定して工事をするのは、結構大変です。
市の指定排水設備工事事業者としての多くの経験を活かすことで、今回の工事でも、しっかり原因を見極めて、工事の区間を特定し、最小限の工事で済ませることで、なるべく費用をおさえて工事ができました。
※指定排水設備工事事業者とは何かは、こちらをクリックしてご確認ください。
今回の集合住宅のように高圧洗浄して流れるようになっても、すぐに詰まってしまうようなことが、一、二度が続くようであれば詰まりの根本原因が他にあるはずです。居住者さんにご迷惑をかけないためにも、排水管の入れ替えも視野に原因調査をしっかり行うことをおすすめします。