天井から雨漏り!シート防水からFRP防水での陸屋根修繕工事

2024年10月18日 |  リフォーム事例

横浜市戸塚区の不動産管理会社様より、賃貸アパートの陸屋根の防水工事のご依頼をいただきました。

陸屋根の防水工事依頼内容

2階の居住者様から玄関の天井から雨漏りをしていると不動産管理会社様に連絡があったとのことで、屋根の状況を調査して、雨漏りを解消して欲しいというご依頼でした。

天井からの雨漏りということで、急いで日程を調整してお伺いしました。しかし、残念ながらお伺いした日は雨で、屋根にのぼって確認することができませんでした。この日は屋根を横から確認、その後、雨漏りしている入居者様の玄関の天井を確認させていただきました。

横から見た陸屋根の状況1
横から見た陸屋根の状況1
横から見た陸屋根の状況2
横から見た陸屋根の状況2
雨漏りしている玄関の天井1
雨漏りしている玄関の天井1
雨漏りしている玄関の天井2
雨漏りしている玄関の天井2

陸屋根の現状調査・雨漏り原因特定

後日改めてお伺いして、屋根にのぼって現状調査を行いました。

こちらの賃貸アパートの陸屋根の防水は、シート防水が採用されていました。前回横から確認したときに塩化ビニールシートが破損している箇所が何箇所も見えましたが、実際に屋根にのぼって確認してみたところ、塩化ビニールシートを止めているディスク部分で2~30箇所も破損して陥没していました。

塩ビシートの破損状況1
塩ビシートの破損状況1
塩ビシートの破損状況2
塩ビシートの破損状況2
塩ビシートの破損状況3
塩ビシートの破損状況3

塩化ビニールシートが破れたところから雨水が浸入し、下地が腐食や破損することで雨水をせき止めることができなくなり、その結果、天井から雨漏りしたと考えられます。

しかし、ディスク部分で2~30箇所も破損していたのには、ちょっと驚きました。

防水シートは、太陽の熱による膨張と収縮を繰り返すことで、大きな負荷を受け、破損する可能性があります。夏の暑さだけでなく、冬の寒さによる収縮もシートに大きなストレスを与えます。これらの熱による伸縮と寒暖差の影響を考慮し、シートに十分な余裕を持たせて施工しないと、特に継ぎ目や固定部分に過度の負荷がかかり、破けたり剥がれたりする原因となります。

また、断熱性を上げるために断熱材の上に防水シートを敷いていましたが、屋根の表面と防水シートの間に断熱材があると、その分、シートが引っ張られやすくなります。

今回、これだけ多くの個所で塩化ビニールシートが破損していた一番の原因は、アパート建築当時の防水シートの張り方が、シートに十分な余裕を持たせないものだったためと考えられます。防水に限らず、20年30年前と比べると、より高い効果が得られたり、効果がより長い期間持続するなど素材や工法は進化しています。

天井からの雨漏り箇所の追加確認

思った以上に塩化ビニールシートが破損している状況でしたので、お客様に屋根の状況をご説明し、他のお部屋で雨漏りがないか確認することにしました。

すると、空室になっていたお部屋の和室とキッチンの天井から酷い雨漏りが発生していました。

防水工事の前後

陸屋根の防水工事内容

防水工事の範囲

お客様からは部分補修で対応できないかご相談がありました。

しかし、防水シートが破れている箇所が2~30箇所もあり、

・全面防水工事ではなく部分補修をしても同じくらい費用がかかること
・部分補修では保証が付かないこと

の2点から、5年保証付きの全面防水工事で対応することになりました。

防水の施工方法

当初は、ウレタン防水を予定していました。しかし、下地の状態があまりよくなかったため、施工時の判断でFRP防水に変更しました。FRP防水の特徴の一つは、下地との密着性が高いことです。そのため、下地の状態が多少悪くても防水層をしっかりと形成できることから、ウレタン防水より適していると判断しました。

FRP防水工事

大きく4つの工程で工事を行います。

  1. 下地の調整
  2. プライマーの塗布
  3. 防水層の形成
  4. トップコートの塗布

(1)下地の調整

まず、既存で貼られている塩ビシートを撤去して、高圧洗浄機で下地に付着した汚れを綺麗に掃除します。陥没していたディスク部分の下地を補修します。陥没していた箇所以外は、古い塗膜などを落とすケレン作業で下地の凹凸を無くして平らに整えます。

(2)プライマーの塗布

下地に防水層との密着性を高めるため、接着効果のある塗料であるプライマーを塗布します。この工程をしっかりやることで、防水層の剥がれを防ぎ、防水の寿命を延ばすことに繋がります。

(3)防水層の形成

1層目のガラスマットを敷き、ポリエステル樹脂を塗布します。ポリエステル樹脂の内部に気泡が残らないようにローラーで除去します。再度、ポリエステル樹脂を塗布します。2層目のガラスマットを敷いて、気泡を除去します。2層重ねることで、耐久性のある防水層を形成します。

(4)トップコートの塗布

防水層が紫外線で劣化しないよう保護するため、トップコートを塗布して防水工事完了です。

陸屋根の防水工事を終えて

今回は屋根が平らで傾斜がほとんどない陸屋根の防水工事でした。その構造から陸屋根は、傾斜のある屋根と比べると、どうしても雨漏りのリスクが高くなるため、万全な防水施工はもちろん、排水設計や定期的な点検・メンテナンスが欠かせません。

屋根の防水層は、紫外線や温度変化などの影響を受け、経年劣化が避けられません。一般的に10~30年が寿命と言われ、ひび割れや剥がれなどが発生すると、雨水が建物内部に浸入し、建物の構造を損なう可能性があります。最悪の場合、シロアリ被害や腐食といった深刻な問題に発展する恐れもあるため、早めの点検と適切な修繕が重要です。

もし、ご自宅の屋根に少しでも異常を感じたら、専門業者にご相談ください。定期的な点検を通じて、雨漏りを未然に防ぎ、建物を長持ちさせることができます。

ページトップへ